前回のあらすじ
前回の記事
で緑茶の減量効果が本当にあるのか、科学的根拠を調べてみました。
結論だけ書いておくと、緑茶の減量効果はあったとしてもわずかで現実的にはほぼ意味がないというものでした。
賢い読者の方は、前回取り上げたシステマティックレビュー1)は2012年までの研究成果だから、それ以後に緑茶の効果を示した論文も出ている可能性はないの?と思ったはずです。
ちゃんと2012年以降の論文も調べてみました。
2012年以降の研究
医師御用達の文献データベースPubmedで2012年以降に発表されたランダム化比較試験の研究を調べると26件がヒット。その中でも緑茶と体重減少について調べた論文をいくつか紹介します。
緑茶抽出物の代謝と体重に対する長期効果
この論文では、60名の白人を対象として緑茶抽出物を3ヶ月飲んでもらい体重やBMIを測定しました。2) 結果として緑茶抽出物の摂取による減量効果は観察されませんでした。また、この研究では、便の成分を分析して、便として排出されるエネルギー量や脂肪量も測定したようですがこれらにも差はなかったようです。
高用量の緑茶抽出物の減量効果
こちらの論文は、102名のBMIが27を超えている女性に高用量の緑茶抽出物を12週間飲んでもらい、プラセボと減量効果を比較しました。論文の抄録(概要)には、高用量の緑茶抽出物には有意な減量効果を認めた!と書いてあります。
緑茶にはやっぱり効果がある!?
しかしながら本文を見ると、緑茶抽出物を飲んだ群では、平均76.8kg(SD=11.3) → 75.7kg(SD=11.5)と平均すると1.1kgの減量効果があり、これが統計学的有意差があったと主張しています。プラセボ群をみてみると平均75.8kg→73.8kgと2kgの減量をしていますが、こちらは統計学的有意差なしです。プラセボでも平均して2kg減量していて、緑茶群では1.1kgしか減っていないのです。本来ならば緑茶群とプラセボ群の減量の幅を統計学的検定しなければいけないのに各群の前後比較しかしていません。さらに、102名が研究参加したと書いてありますが、本文をみるとランダム化されたのが92名で実際には15名がドロップアウトして研究を完遂したの77名でした。脱落率16%なのでまぁまぁ脱落者が大きく、バイアスがかかる可能性があります。実際にこの点について他の研究者からも指摘されています。3)
少し小難しく説明してしまったので、要約すると緑茶抽出物を飲んでない群の方が体重は減っているし、参加者もドロップアウトした人が多いのであまり信用できないということです。
Google検索トップのサイトの落とし穴
Googleの検索でトップ表示(2021/04/10現在)されているお茶屋さんの山麓園のページは、お茶のダイエット効果に関して科学的根拠を記載していて、一見ちゃんとしてそうに見えます。
栄養学的な情報の落とし穴
よく「”〇〇〇”は、脂肪燃焼効果があります!」とかいうフレーズ見かけますよね。でもこれはからくりがあります。
このHPにも
“緑茶に含まれる「エピガロカテキンガレート(以下、EGCG)」は、肝臓を活性化し、脂質代謝を上げることでエネルギー消費を高め、体脂肪を燃やします。”
と書いてあります。このような栄養成分の研究は、細胞レベルや動物実験でやられている事が多いです。確かにEGCGはエネルギー消費を高める作用が観察されていますが、それが本当にダイエット効果があるわけではありません。そういう栄養成分をたくさんとっても効果は頭打ちになる場合が多いので、実際に痩せるほどのエネルギー消費を高める作用がなかったり、実際に普段飲むお茶の量では全然効果が出ない場合があるからです。
さらにこのHPでは、市販のお茶とミネラルウォーターを飲んだ効果を検討した論文が提示されています。この論文では、濃いお茶(おーいお茶の濃いやつ)を飲んだ群では1%脂肪が減ったけど、体重は変わらなかったと記載されています。体脂肪率の測定は、インピーダンス法という誤差の多い測定方法を使っていて、さらに研究参加人数も少ないためこの1%の脂肪減量は誤差の可能性があります。他にもツッコミどころはいくつかあり、この研究だけで緑茶に体脂肪の減量効果があると結論付けるのは難しいです。(そもそも本当にそれが示されるなら、英語論文で世界に向けて発信していると思います)
まとめ
ということで2回に渡り、緑茶の減量効果について真剣に考えてみました。大事なポイントは、「本当に人に投与して、減量の効果があったのか」という点と、「その検証方法は妥当か?」ということです。検証方法が妥当かを考えるには専門的な知識が必要ですが、減量効果を本当に示しているかはみなさんでも判断できると思います。
よくある「脂肪燃焼効果」や「代謝アップ」という謳い文句の商品はほとんどが意味が無いものです。本当に妥当な方法で効果を示していれば、医薬品として収載されるはずです。逆に言えば医薬品はそれだけ厳しい審査を経て医療現場で使われています。
みなさんも正しい知識を持って、騙されないようにしましょう!
他に効果を科学的に検証してほしいトピックがあればコメント欄もしくはお問い合わせからご連絡ください。
コメント