ファスティングとは
最近ファスティングが流行っていますよね。
ファスティングとは断食のことで、週のうち何日か断食する方法や1日の中で食事を取らない時間をとる方法などあります。
ダイエット方法として注目されていますが、実はダイエット以外にも健康への効果があることがわかっています。
病院の外来で生活習慣病や肥満の患者さんたちの指導をしている総合診療医の私が、ファスティングの効果と正しいやり方について解説していきます。
ファスティングのダイエット効果
ファスティングのダイエット効果を検討した研究はたくさんあります。
結論から言うと、ファスティングはダイエットには有効だけれど他の方法(カロリー制限や糖質制限など)と効果はあまり変わりません。
ファスティングのダイエット効果を検証した研究では、1日おきのファスティングを3ヶ月行った研究では平均して5.2kgの減量効果を認めました。
しかしながら、カロリー制限ダイエットとファスティングを比較した研究では、半年後と1年後の減量効果は変わりありませんでした。
ダイエット以外の効果
ファスティングは、単にダイエットとして体重を落とすだけでなく様々な健康上のメリットがあると言われています。
現時点で効果が期待されているものを紹介しますが、まだまだ動物実験や細胞や遺伝子のレベルの実験で本当にメリットがあるか分かっていないことも多いので注意が必要です。
生活習慣病予防
ファスティングは、血圧や悪玉コレステロール、中性脂肪、血糖の異常などを改善する効果が報告されています。また、ファスティングには抗酸化ストレス作用があり、動脈硬化を予防することが期待されています。
アンチエイジング
ファスティングの効果としてアンチエイジングを期待する人も多いのではないでしょうか。
ファスティングにより加齢による身体の変化を遅くできるようになる可能性は、動物実験レベルで示されています。しかしこの効果は、加齢と関連する遺伝子への影響などを見た研究が多いです。
現時点では、ファスティングにアンチエイジング効果があるかどうかはまだ分からないと言うのが実際だと思います。
癌の予防や治療
動物実験や遺伝子レベルの研究では、ファスティングが癌の予防や抑制効果があることが期待できる決kがが示されています。実際に癌の患者がファスティングを行うことで、腫瘍の治療に効果があるのか臨床研究が現在行われています。
現時点ではまだ人において癌を小さくするような効果が証明されているわけではないので、癌の治療目的にファスティングをしたり、通常の抗がん剤を辞めたりはしないようにしてください。
認知症予防
ファスティングが認知症の一種であるアルツハイマー病を予防する可能性が動物実験で示されています。認知症の他にもパーキンソン病を予防する効果も期待されていますが、まだ人間で本当に認知症やパーキンソン病は予防できるかは分かっていません。
一方で、食べすぎてエネルギー摂取が過剰な人は認知症やパーキン病、脳卒中のリスクが高まることは知られているので、食事に気を使うことは重要です。
ファスティングが向いている人と向かない人
数あるダイエット方法がありますが、その中でファスティングが向いている人の特徴を説明します。
ファスティングは、食べる時間、曜日を制限する方法なのでそのやり方ができる生活スケジュールの人じゃないと実践が難しいです。仕事の都合上休憩の時間が決まっている人は、時間制限ファスティングは難しいかもしれません。
またファスティングは食べていい時間には、好きなものを食べられるので食べれるものを制限するのが嫌な人には向いているかもしれません。ただし、いくらファスティングをしているからと言ってあまりに食べ過ぎたら効果は薄まるので注意してください。
ファスティングは空腹感との闘いがシビアです。糖質制限ダイエットなどであればお腹が空いたらナッツやプロテインなどの間食をすることができますが、ファスティングはお腹がすいても水やお茶などしか飲めません。逆に空腹感に負けない精神を鍛えることができれば、今後リバウンドする可能性も下げれるかもしれません。お腹が空いても仕事中で食べることが現実的にできないような仕事をしている人はファスティングに向いているかもしれません。在宅勤務などで常に食べることができる環境で空腹に耐えるのは至難の技かもしれません。自分の置かれている環境を考えてファスティングができそうか考えてみてください。
ファスティングが向いてないなと思う人には、糖質制限ダイエットがおすすめです。糖質制限に関しても別の記事にまとめてあるので、よければ御覧ください。
糖質制限の最新研究と実践結果のまとめ【総合診療医の糖質制限日記】
ファスティングのやり方
実際にファスティングをやってみようという人のためにやり方を紹介します。
時間制限 or 5:2ファスティング
ファスティングのやり方は食べる時間を制限する方法とまる1日食べない日を作る方法の二種類あります。
時間制限ファスティングは、1日の間で食事を食べてもいい時間を制限する方法です。8時間制限であれば、8時間の間は食事をしていいけれどそれ以外の16時間は食事を取れないと言う方法です。
5:2ファスティングは、1週間の間の2日間は断食して残りの5日間は普通に食事をするという方法です。断食の日は全く食べていけないわけではなく、かなり厳しいカロリー制限(1日500kcal)をします。
どちらの方が優れているという根拠はあまりないので、自分の生活スタイルに合わせて方法を選ぶといいと思います。
時間制限ファスティングの場合は、自分の食事の時間を調整する必要があるので仕事の都合で食事の時間が調整できない人は実践するのは難しいかもしれません。
5:2ファスティングは、1日の中での時間調整は不要ですしファスティングする日も自由に選べるので融通は効きやすいです。しかしながら空腹感と戦う時間が長いのがデメリットだと思います。
私は、朝食を摂らずに12時に昼食を食べ、20時までに夕食を済ませるというスケジュールにして8時間制限のファスティングをやっています。食べる食事を朝・昼にしてもいいと思いますので、自分の生活スケジュールに合わせた方法でやってください。
具体的な方法
時間制限 | 5:2ファスティング | |
1ヶ月目 | 10時間食事可 週5日 | 1000kcal/dayを週1日 |
2ヶ月目 | 8時間食事可 週5日 | 1000kcal/dayを週2日 |
3ヶ月目 | 6時間食事可 週5日 | 750kcal/dayを週2日 |
4ヶ月目以降 | 6時間食事可 週7日 | 500kcal/dayを週2日 |
いきなり厳しいファスティングをするのは難しいので、ゆるく始めて1ヶ月おきに厳しくしていきます。
時間制限ファスティングの場合は最初は食事を10時間以内に済ませるのを週5日トライすることから始めて、徐々に食事の時間を短くしていきます。最終的なゴールは、6時間以内に食事を済ませるのを毎日続けることです。
5:2ファスティングの場合は、ファスティングをする日の摂取カロリーを徐々に制限していきます。最初は1000kcal/日を週1回から始めて徐々にカロリー制限を厳しくし、最終的に500kcal/日を週2回にしていきます。
酵素ドリンクなどは不要
ファスティングについて調べるとファスティング用の酵素ドリンクなどが勧められています。こういった酵素ドリンクや回復食などには特に医学的な根拠はないので不要だと思います。
5:2ファスティングなどをやる人は500kcalに制限しつつビタミンなどをとれるようにプロテインなどでタンパク質とビタミンを補充するのがいいと思います。
わざわざ高額な酵素ドリンクなどを買わなくても大丈夫です!
ファスティングをやる上での2つの注意点
ファスティングで重要なのは、何も食べていない時間を作ることです。空腹感がつらいからと言って飴をなめたり、砂糖が入っているような飲みものを飲んだら効果がなくなってしまいます。基本的にはファスティング時間には、水かお茶のみをとったり、口寂しときはガムなどにしておきましょう。
基本的にはファスティングは食べる時間や日にちを守れば食事制限はありませんが、暴食してしまえば当然ダイエット効果はなくなってしまいます。ファスティングは食べたものを帳消しにしてくれるわけではないので、食べすぎには注意してください。
参考文献
- Alternate day fasting for weight loss in normal weight and overweight subjects: a randomized controlled trial.
- Effect of Alternate-Day Fasting on Weight Loss, Weight Maintenance, and Cardioprotection Among Metabolically Healthy Obese Adults: A Randomized Clinical Trial.
- Effects of Intermittent Fasting on Health, Aging, and Disease
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