実際に打った医師が教えるコロナワクチンの効果と副作用

COVID-19
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新型コロナウイルスワクチン接種しました

  3月5日と26日にファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンを接種しました!

 1回目の接種は、数時間後から打った部位の筋肉痛が起こりました。「何か重いものでも持ったっけなー?」というくらいのじんわりとした筋肉痛で、1日経ったらすっと消えました。

 2回目の接種も半日くらいたってから筋肉痛が起こりました。その後軽い倦怠感がでましたが、熱がでることもなく、寝ておきたら普段どおり元気でした。

 コロナワクチンに関してはまだ分かっていない部分もありますが、現時点で分かっていることを医師の視点でわかりやすく解説したいと思います。

日本で接種される予定の3種類のワクチン

ファイザー社モデルナ社アストラゼネカ社
種類mRNAmRNAウイルスベクター
投与方法21日あけて2回28日あけて2回4−12週あけて2回
接種方法筋注筋注筋注
有効性(発症予防)95%94.1%62.1〜90%
有効性(重症化予防)88.9%100%
アナフィラキシー(100万接種あたり)11.12.58.7
開発国アメリカアメリカイギリス
引用1)をもとに作成

 2021年3月27日時点では、ファイザー社のワクチン”コミナティ”のみが日本で承認されています。モデルナ社ワクチンは、米国で開発され米国で幅広く接種されています。アストラゼネカ社のコロナワクチンは、イギリスで開発され主に欧州で幅広く接種されています。

mRNAワクチンってなに?

 みなさんの一番の関心は、「mRNAワクチンってなに?安全なの?」ということだと思います。まずmRNAワクチンについて説明していきます。

そもそもmRNAってなに?

mRNAの”m”はメッセンジャーの略です。RNAはDNAと同じ、核酸と呼ばれる遺伝情報を扱う物質の一つです。人間の遺伝子は、DNAという物質からできており、このDNAの中の配列(C,G,A,Tの4種類の並び)によって人間の設計図が記録されています。人間の細胞の中では、このDNAという設計図をもとに、必要なタンパク質を作って生きるのに必要な活動をしています。遺伝子(DNA)からタンパク質を作るときに使われるのがmRNAです。遺伝子は、人体で使われるすべての設計図が含まれるので膨大です。その中で今作りたいタンパク質の情報だけコピーしたメモがmRNAです。イメージとしては、たくさんのレシピが記録された分厚い本(DNA)から自分が今つくりたい料理のレシピだけをメモしたものがmRNAです。このmRNAにコピーされた設計図を、リボソームという翻訳機にかけるとタンパク質を作ることができます。mRNAは非常に不安定な物質なので、タンパク質を作ったあとは自然に分解されてしまいます

ワクチンの仕組み

 そもそもワクチンは、ウイルスや細菌などの病原体の一部や弱らせたものを注射することで、身体の免疫細胞に覚えさせることでその病原体への免疫をつけるという仕組みです。いわば模擬演習で、ワクチンで病原体の顔を免疫細胞に覚えさせて、次に本物の病原体が入ってきたときにすぐに反応して病原体を追い出せるようにしておくという仕組みです。

 病原体を弱らせたものを使ったのが生ワクチンと呼ばれます。風疹や麻疹、おたふくなどのワクチンがこの生ワクチンです。ワクチンの効果が強く免疫がつきやすい代わりに副作用も多めなのが生ワクチンです。

 一方で病原体の一部だけを人工的に作って注射するのが、不活化ワクチンです。病原体そのものではなく一部なので、感染する恐れもなく副作用も少ないです。一方で、免疫がつきにくいという欠点があるので、免疫をブーストする成分(アジュバント)と一緒に注射することもあります。不活化ワクチンでは、この免疫をつけるための病原体の一部を人工的に作るのが難しくワクチン開発にはとても長い時間がかかります。

mRNAワクチンの仕組み

 mRNAワクチンは、不活化ワクチンの一種です。従来は、病原体の一部のタンパク質を人工的に作って、そのタンパク質を注射していました。mRNAワクチンは、ウイルスの蛋白の一部の設計図をmRNAとして注射することで、人間の翻訳機(リボソーム)を借りて蛋白を作るという仕組みです。注射されたmRNAが、翻訳機で読み取られてウイルスの一部のタンパク質を作り、それに免疫細胞が反応して免疫が付きます。注射したmRNA自体は不安定な物質なので、すぐに分解されて消えてしまうのでウイルスの成分が作られ続けるということはありません。

mRNAを注射したらウイルスの遺伝子が、自分の身体にずっと残るのではないか?と心配している人がいます。注射されたmRNAの遺伝情報が、自分の遺伝子に組み込まれることはありません。これは、生物の遺伝子から蛋白を作る仕組みにおいて、DNA→mRNAの変換は行われるが、mRNA→DNAの変換を行う仕組みは生物の中にないというセントラルドグマと言われる原則があるからです。唯一の例外はHIVウイルスで、RNA→DNAの変換を行える逆転写酵素という物を持っていますが、これがHIVを特殊なウイルスとしている理由なのでHIV以外ではこの現象は起こりません。

 mRNAワクチンを打ってコロナウイルスの遺伝情報が自分の身体に残り続けることはない

ということを理解して頂ければ幸いです。

コロナワクチンはどれくらい効果があるの?

 mRNAワクチンの仕組みを理解頂いた上で、効果について説明していきます。

 ここでは、現時点で日本で認可されているファイザー社のコロナワクチンについて解説していきます。

ワクチン効果(Vaccine Efficacy)

ワクチンの効果は、”打った人と打っていない人と比べて、病気を発症する人を何%減らせたか”を指標とします。

 ファイザー社のワクチン効果は、95%です。

実際の研究のデータをみて見ると、COVID-19を発症したのは

 ワクチン接種者:8名/18556名

 ワクチン非接種者(プラセボ):162名/18530名

となっており、1万8000人に打つと大体162-8=154人のコロナの発症を抑えられるということです。

ワクチン効果としては、154/162=95%ということです。

よくある誤解は、ワクチンを打った人の95%がCOVID-19を発症しない(5%は発症する)と思っているひとがいますが、これは誤解です。ワクチンを打っても打たなくてもCOVID-19にかからない人はいるので、あくまで発症する人を何%減らせるかという指標になっています。

 ちなみに季節性インフルエンザのワクチン効果は、約60%と言われているので新型コロナウイルスのワクチンの効果がとても高いことが分かります。

コロナワクチンの副作用

 前提として薬でも注射でもどんな治療には必ず副作用があります。なので我々医療者は、副作用と効果を天秤にかけて効果によるメリットが大きい場合に治療を行います。ワクチンも同様に副作用はどんなワクチンでもあります。

ファイザー社のワクチンの副作用

 ファイザー社のワクチンの臨床試験の結果をみてみると副作用としては、

  • 接種部位の疼痛: 7-8割
  • 発熱:約1割
  • 倦怠感:3〜5割

と報告されています。これらはいずれも程度が軽く、仕事を休むほどのものはほとんどないと報告されています。これらの副作用は、注入したタンパク質に免疫反応が起きていることによるものなので、ある意味ワクチンには付き物といえます。確かに痛いのは嫌ですが、これらの副作用が無くなることはないと思います。

 発熱、痛み、だるさは、「自分免疫が反応してワクチンの効果が出てきている証拠」なので、ある意味仕方のない部分です。

アナフィラキシー

 ニュースでも話題になっているのはアナフィラキシーの副作用です。アナフィラキシーは、アレルギー反応の一種で、全身のじんましん、めまい、血圧低下、息苦しさ、吐き気、腹痛、下痢などの全身の症状を伴うものです。原則どんな薬でもアナフィラキシーは起こりうるので、その頻度が問題になります。

 ファイザー社のワクチンのアナフィラキシーは、100万人あたり11.1〜17人と言われています。1,2)

 これは、インフルエンザワクチン(100万人あたり1.3人)と比べると多いので話題になっています。一方でほとんどの人が飲んだことがある痛み止めでのアナフィラキシーは、100万人あたり1300人報告されており、痛み止めと比べるとコロナウイルスワクチンのアナフィラキシーは100分の1程度です。もちろんワクチンは予防のためのもので、痛み止めは治療のためのものなので単純には比較できません。「アナフィラキシーが怖いから打つのはやめよう」と思考停止するのではなく、アナフィラキシーのリスクと、COVID-19を予防できることのメリットを天秤にかける必要があります。

結局どうしたらいい?

 ここからは個人的見解です。

 今回のCOVID-19のワクチンは、とてもワクチン効果が高く、今のCOVID-19の社会的インパクトを考えるとメリットはかなり大きいと思います。一方で、痛みや発熱などの副作用はワクチンとしては当たり前の副作用なのでこれは許容できると思います。アナフィラキシーに関しては確かに他のワクチンよりは頻度は多いもののあくまで稀な副作用だと思います。

 まだ長期的なことは分かっていませんが、「遺伝子組み換え」されるわけではないのは少なくとも知ってほしいです。「分からないから怖い」と思うのは自然なことですが、そこで思考停止するのではなく「分かっていること」から将来的なリスクも含めてどう考えるかが大切です。

 以上からは私は、大半の人にはワクチンのメリットがあると思います。特に高齢者や持病を持っている人は打つことのメリットが絶大だと思います。

打たないほうがいい人

 このコロナワクチンを絶対に避けた方がいい人を挙げるとしたら

  • ポリエチレングリコール、ポリソルベートのアレルギーがある人(注射の成分に含まれる)

です。

 他の薬や食べ物のアレルギーがあるからと言って、このワクチンを打ってはいけないわけではありません。心配な人は、事前に医師に相談しましょう。

もっと詳しく知りたい人のために

 もっと詳しくしりたい人のためにおすすめのサイトをお知らせしておきます。

これは、有志の医師が立ち上げた新型コロナウイルスワクチンに関する正しい情報を発信するサイトです。私の知り合いの先生も関わっており、見やすいサイトと動画で情報を発信しているのでみてみるといいと思います。

参考文献

  1. 新型コロナワクチンまとめ(医療従事者向け)
  2. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine

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