最近血圧が高めのあなたにすすめる生活習慣改善のポイント6選
血圧が120/80mmHgを超えると脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上昇すると言われています。血圧が高めで心配な人もすでに高血圧の治療を受けている人も、生活習慣の改善は非常に大切です。生活習慣を改善することは、血圧の薬(降圧薬)と同じくらい効果があります。血圧が高めの人が気をつけたい生活習慣の6つのポイントについて解説していきます。
血圧の基準値について知りたい人はこちらの記事へ
生活習慣改善の6つのポイント
- 減塩
- 果物・野菜の摂取
- 減量
- 運動
- 節酒
- 禁煙
生活習慣改善の効果
生活習慣を改善することで血圧が下がることは多くの研究で示されています。例えば、高血圧の人が塩分摂取量を5g/日減らすと収縮期血圧(上の血圧)が5mmHg下がることが報告されています。1) 同様に、減量や運動も収縮期血圧を4-5mmHg程度下げる効果があると言われています。2) これらを組み合わせることで血圧の薬1剤と同じくらいの効果が期待できます。なので、血圧が高めの人はまず生活習慣を改善することから始めましょう!!一方で、血圧が160mmHgを超えている人や脳梗塞や心臓病のリスクが高い人(高齢、喫煙者、糖尿病など)は、薬の力も借りて早めに血圧をコントロールした方がいいので必ず病院を受診して相談しましょう!
減塩
高血圧患者さんにまずおすすめするのは”減塩”です。減塩の目標は、食塩摂取量を6g/未満とすることです。令和元年(2019年)の国民健康栄養調査の結果では日本人の食塩摂取量の平均は10.1g/日であり、多くの日本人が食塩を摂りすぎていることが分かります。3) 血圧が高くない人でも食塩摂取量の目標値は8g /日とされており、ほとんどの人が減塩に取り組む必要があると言えます。まずは、コンビニで買う弁当や加工食品、普段つかう調味料にどれくらい塩分が含まれるか確認してみましょう。以前は、ナトリウム量を食塩量に換算(2.54倍する)必要がありましたが、2020年からは食塩相当量の表示が義務化されているので、いろいろな食品のラベルを見て自分の食塩摂取量を見直してみましょう。
減塩についての詳しい説明はこちらもご参照ください。
果物・野菜の摂取
果物や野菜に多く含まれるカリウムは、体から塩分(ナトリウム)を排出させる作用があります。世界保健機構(WHO)は、カリウムを1日あたり約3500mg摂るようにすすめています。4) 日本人の平均的なカリウム摂取量が2500mg前後なので、1日あたり1000mgくらいカリウムの摂取量を増やす必要があります。3) 1000mgのカリウムと言われてもイメージが沸かないと思いますが、バナナ1本あたりのカリウムが約400mgです。腎臓が悪い人は逆にカリウムを制限しなければいけないので注意が必要です。また、バナナなどの果物はカロリーも高いので糖尿病の人や体重が多めの人は果物よりも野菜を中心にカリウムを摂りましょう。
さらに高血圧に特化したDASH食という食事療法もあります。詳しくはこちらの記事を
減量
体重が増えすぎると血圧が上がります。実際に外来で患者さんを見ていても血圧が最近高いなと思って聞くと、「最近太って体重が5kg増えちゃいました」という方も多いです。逆にダイエットをして減量して血圧の薬をやめれる人もいるので、体重のコントロールは非常に重要です。減量の効果は、体重1kgあたり血圧が1mmHg下がると言われています。2)体格によって適正体重は変わるので、体重の指標にはBMI(Body Mass Index)という指標を使います。BMIは、「体重÷身長(m)÷身長(m)」で簡単に計算できます。このとき身長はm表示なので、170cm, 65kgの人であれば、BMIは「65÷1.7÷1.7=22.5」と計算できます。日本ではBMIが25を超えると肥満となるので、BMIが25を切るように体重をコントロールしましょう。BMIの目標値は22とされているので、「身長(m)×身長(m)×22」で自分の身長から目標体重を計算できます。身長が160cmであれば、「1.6×1.6×22=56.3kg」で約56kgが理想体重と計算できます。計算も面倒だと思うので次の表に身長ごとの理想体重と肥満の基準を載せておくので参考にしてください。
身長(cm) | 理想体重(BMI=22) | 肥満(BMI≧25) |
150 | 49.5kg | 56.3kg以上 |
155 | 52.9kg | 60.1kg以上 |
160 | 56.3kg | 64.0kg以上 |
165 | 59.9kg | 68.1kg以上 |
170 | 63.6kg | 72.3kg以上 |
175 | 67.4kg | 76.6kg以上 |
180 | 71.3kg | 81.0kg以上 |
運動
運動も血圧を5mmHg程度下げる効果が報告されています。3) 運動の種類としては、速歩きやジョギングなどのいわゆる有酸素運動が推奨されています。医学的には、最大酸素摂取量の40-60%程度の負荷やボルグ指数12-13程度と言われていますが、イメージできませんよね。これは、「少しつらい」と感じる程度の運動負荷なので、全く息があがらない程度のウォーキングはあまり意味がありません。ウォーキングなら速歩きで少し息があがったり、汗ばむ程度の速さを心がけましょう。時間としては1日30分以上を週5日以上行うようにしましょう。5) 心臓病や肺の病気など持病がある人に関しては、運動をしてもよいかどうか主治医に確認してください。
節酒
飲酒習慣も血圧上昇の原因となります。お酒を飲むと一時的に血圧が下がることがありますが、長期に飲酒を続けると血圧が上がります。飲酒を制限すると1-2週間で血圧が下がってくると言われています。高血圧の患者さんでは、お酒はエタノール換算で男性は20-30ml以下、女性は10-20ml以下に制限することが勧められています。2)
イメージをつかみやすくするために、お酒の種類ごとにざっくり計算してみました。
お酒の種類 | 男性の推奨量 | 女性の推奨量 |
ビール | 500ml(中瓶1本) | 350ml(缶1本) |
日本酒 | 1合 | 0.5合 |
ワイン | グラス1杯(120-180ml) | 少なめグラス1杯(100-120ml) |
ウイスキー | ダブル1杯(60ml) | シングル1杯(30ml) |
焼酎 | ロック1杯程度(100ml) | 少なめ1杯(80ml程度) |
禁煙
タバコが脳梗塞や心筋梗塞の原因となることは皆さんご存知だと思います。タバコを1本吸うと15分くらい血圧が上がると言われています。1日1箱吸うと5時間くらい血圧が上がった状態になります。タバコは、血圧があがるだけでなく動脈硬化を強く引き起こすために脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めてしまいます。それ以外にも肺の病気や癌の原因にもなるため、病気になる前に是非タバコを辞めましょう!IQOS®などの電子タバコに関しては、まだ害がないというデータがないため原則的には完全な禁煙をおすすめします。自力での禁煙は難しいので、禁煙外来を受診することをおすすめします。禁煙外来に興味を持ったひとはこちらへ。(すぐ禁煙.jp)
まとめ
血圧が高めの人が改善すべき生活習慣の6つのポイントをまとめてみました。どれも非常に重要であり、生活習慣改善を組み合わせれば血圧を下げる効果は薬に匹敵します。しかしながら日々の行動を変えるのはなかなか自分ひとりで変えるのは難しい場合もあるので、最近血圧が高めだと感じたら近くの病院で相談してみて医師や栄養士さんのサポートを受けながら行動を変えていくのもありだと思います。一度に全部はできなくても、できそうなことから取り組んでみてください!
参考文献
- Effect of modest salt reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized trials. Implications for public health.
- 高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)
- 令和元年「国民健康・栄養調査」の結果
- Increasing potassium intake to reduce blood pressure and risk of cardiovascular diseases in adults
- Exercise for the Prevention and Treatment of Hypertension – Implications and Application(ACSM)
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